インプラントとはなんですか?
一口にインプラントというと、体の中にに埋め込む器具を総称してインプラントといいます。歯科でいうインプラントとは金属製(主にチタン)の人工の歯の根、歯科用インプラント(デンタルインプラント)のことを指します。
もっと詳しく
一口にインプラントというと、体の中にに埋め込む器具を総称してインプラントといいます。広くは骨折した骨を止めるボルトや豊胸手術、心臓のペースメーカーなども含まれますが、歯科でいうインプラントとは金属製(主にチタン)の人工の歯の根、歯科用インプラント(デンタルインプラント)のことを指します。インプラントについては、安全性や費用のことで度々メディアに取り沙汰されることもありますが、平成28年の歯科疾患実態調査(1)によると40歳以上の50人に1〜2人程度が受診している一般的な歯科治療法となっています。
歯科用インプラントについて
歯科におけるインプラント治療は欠損補綴(歯を失った後の治療法)として代表する3つの治療法の一つです。インプラントの他には入れ歯・ブリッジなどが挙げらます。インプラントは歯が抜けた後の顎の骨に、直接人工歯根を埋入することで、チタン製のインプラントと骨が接着し、他の歯と同じように単独で歯冠を支える装置なります。他の欠損補綴(入れ歯・ブリッジ)のように隣の歯に負担をかけたり、削ったりすることがないという特徴があります。
インプラントの素材
インプラントの素材はチタンという金属が使われていますが、これは人体との親和性が高いためです。簡単に言うと骨と馴染みやすくくっつきやすいということ。これは1952年に、近代インプラントの生みの親とも言われるブローネマルク博士が、偶然研究中にチタンと骨が結合する事象を発見し、研究を重ねた結果良好な成果が得られ、インプラントの素材として広く一般的に使われるようになったとされています。チタンはアレルギーを持つ人も少なく、軽量で丈夫な素材で、人工歯根の他にも骨を止めるボルトなどにも使われています。
因みに1965年、ブローネマルク博士によって人類で初めて近代インプラント手術を受けたヨスタ・ラーソン氏は2006年に亡くなるまでの41年間、歯としての機能に困ること無く使用出来たそうです。
インプラントの治療費
インプラントは保険の効かない自由診療です(一部を除く)。自由診療の費用は医院ごとに違いますのでこの値段であれば安心というものはありません。しかし、価格競争で安さを競うようになってはいずれ価格を下げるために質を落としたり、利益を上げるために不正を行う歯科医院が出てきてもおかしくはありません。しっかり精密検査をして、手術・咬み合わせを整えた治療を行うのであれば、相場として30万〜50万円程度が一般的な価格になります。インプラントは身体に入る新しい人工臓器ですので、費用で決めないようにしましょう。
また、保険適用で出来るインプラントもありますが、条件が課せられています。以下はその例となります(2017年現在)。
- 先天的に顎骨の1/3以上が連続して無い場合
- 上顎の1/3以上が連続して無い、また、鼻腔や副鼻腔へ繋がっているという診断がされた場合
- 下顎の1/3以上が連続して無く、また、病気などによって切除が望ましい場合
※治療はインプラントと取り外し入れ歯を組み合わせた“オーバーデンチャー”というタイプになります。
インプラントが危険ってどういう意味?
過去、インプラント手術が一般的になり始めた頃、インプラントが危険な治療であるかのような報道をされた時代がありました。どんな手術でも、経験も勉強も不足した医師が行えば失敗してしまうのと同じで、インプラントも経験も勉強も不足している歯科医師によって取り返しのつかない状態になられた患者さんは少なからずおられます。
逆にインプラントをしっかり学び、資料を揃えて診査・診断、治療計画をしっかり立てて行えば、とても意義のある治療方法の一つであります。
インプラントの成功率
インプラントの成功率はホームページなどで各歯科医院がデータとして掲出しているところもありますが、臨床研究としては1990年のAdelの報告が有名で、10年成功率が上顎で81%、下顎で95%という結果が出ています。また、インプラントメーカーごとの報告ではノーベル・バイオケア 表面性状の有効性における2001〜2011の生存率(2)では、上顎97.90%、下顎97.8%、スイスのベルン大学で行われたストローマンインプラントの10年間の臨床研究では、511本のインプラントを使用し、成功率(97%)・生存率(98.8%)が報告(3)されています。いずれも高い結果となっております。
インプラント治療を失敗しないために
インプラント治療が優れた治療であることは多くの方が認める事実です。しかしその反面、一部ではトラブルが起こり問題になっていることも聞きます。治療を受ける前にしっかり説明を受け、納得した状態で治療を受けられる医院を選びましょう。
参考文献
- (1) 歯科疾患実態調査結果の概要
- 厚生労働省
平成28年
- (2) Peri-implantitis and implant surfaces – fact vs. fiction
- Suvi Rantanen
November 22, 2017
- (3) 10-year survival and success rates of 511 titanium implants with a sandblasted and acid-etched surface: a retrospective study in 303 partially edentulous patients.
- Buser D¹, Janner SF, Wittneben JG, Brägger U, Ramseier CA, Salvi GE.
DOI: 10.1111/j.1708-8208.2012.00456.x
公開日:2017年12月18日
この記事の執筆者
吉見 哲朗先生
歯科医師
International Congress of Oral Implantologists 専門医・指導医
顎咬合学会 咬み合わせ認定医
日本口腔インプラント学会 専修医