歯列矯正は、矯正専門医にお願いしたほうが良いのでしょうか?
各都道府県に平均6.5人程度しかいない専門医となると知識や技術は高く、治療の専門性も高くなります。しかし、全ての場合において専門医にお任せする必要はないと考えます。
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日本には、平成29年現在で歯科医院が68,000件以上あります。その中で矯正歯科の標榜を立てている歯科院は約20,000件程度。4件あれば約1件は矯正歯科と称していることになります。ではその中で日本矯正歯科学会の専門医はというと306名、認定医でも3,116名となります。単純に振り分けたとして、各都道府県に平均6.5人程度しか専門医はいないということです。確かに専門医となると知識や技術は高く、治療の専門性も高くなります。しかし、全ての場合において専門医にお任せする必要はないと考えます。
矯正認定医と専門医のちがい
そもそも、矯正専門医と認定医はどうちがうのでしょうか?例えば、日本矯正歯科学会が承認する認定医は歯科医師免許取得後も大学等の矯正歯科専門研修機関と認定歯科医院にて、5年以上矯正治療について知識や技術を研鑽し、学会の検定検査に合格すれば取得できるという歯科の中でも難しい認定医の一つです。また、5年に一度は更新が必要なため、維持をするのも難しい資格です。一方専門医は、12年以上の学会在籍年数と、認定を取得後2回以上の更新をした上で試験を受け、合格した矯正医が取得できる狭き門なのです。もちろん、技術や知識に長けていなければなれませんが、仮に技術や知識に長けていても試験を受けるという能動的なアクションを起こさなければ取ることの出来ない資格となるため、取らないという選択肢を選ぶ矯正医も当然おります。つまり、必ずしも専門医でなければならないということはありません。
矯正医と一般開業医のちがい
それでは専門医・認定医の在籍している歯科医院であれば良いのでしょうか。実はそうとも限りません。専門医や認定医は、矯正に関する知識や研究内容について、一般歯科医より詳しいことは確かです。しかし、全ての専門医や認定医が、大学病院等で研修を受けた期間内に、専門医や認定医として治療するのに十分な数の患者さんを担当できるわけではありません。なぜなら、大学病院によっては、矯正治療を受ける患者さんの数がさほど多くないためです。ですから、数症例の経験しか無いにも関わらず認定医になった方も多く(話を直接聞きましたが、約5症例しか新患を取れない大学もありました)、認定医が十分な経験を積むには、認定医取得後の彼らの身の振り方次第で決まります。一方で、矯正を勉強している開業医であれば、数百症例以上の経験を持つ開業医も居ます。矯正歯科における科学的知識はもちろん大切ですが、その科学的知識に基づく経験がとても重要になります。ですから、認定医を持っていなくても矯正治療を得意とする歯科医師がいることも事実です。
認定医・専門医が開業している矯正歯科のメリット
矯正認定医・専門医が得意としているのはその診断力にあります。不正咬合の種類や難易度を熟知し、どうすれば歯並びを綺麗にし、咬み合わせを良くするかを診査・診断し導く力に長けています。ですから、難易度が高い治療は専門医や認定医の力を発揮するに相応しい症例と言えます。また、資格取得後も勉強が必要ですから、常に矯正のことを学んでいますので、こと歯を動かす治療に関しては彼ら以上の知識を有することは一般歯科医には難しいと考えられます。
認定医・専門医が開業している矯正歯科のデメリット
矯正認定医・専門医は、前述したとおり歯科医師になってから矯正専門の研修施設にて5年間専門的な機関にて矯正を学びます。しかし、そこではむし歯や歯周病などの一般的な歯科治療を学ぶことはほとんどありません。ですから、開業している専門医・認定医の矯正歯科ではむし歯や歯周病治療を全く行っていない所も少なくありません。しかし矯正治療中は歯の清掃性が悪くなり、むし歯や歯周病になりやすい状態になることも確かです。つまり、専門医・認定医の歯科医院で矯正を行った場合、別途むし歯や歯周病が進行すれば一般開業医にかかることもあるということです。また、矯正医の多くは補綴治療(詰め物や被せ物)やインプラントを学んでいなかったり、得意としていない場合もあります。その為、矯正治療と一般歯科治療の両方が必要な不正咬合であった場合、咬み合わせを整えた補綴やインプラントを作ることが困難なため、認定・専門医の医院では難しいケースとなります。
もっとも合理的な歯科医院の選び方
それではいったいどんな歯科で矯正治療を受ければ良いのでしょうか。それはその人のお口の中の状態によるものだと思います。例えば
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1.むし歯・歯周病はほとんどないが、歯並びは悪い
この場合、近くに専門医・認定医のいる歯科医院があればそちらがお薦めになります。
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2.歯並びが悪いためにむし歯や歯周病が進行し欠損もある、全体的な治療が必要
この場合は矯正経験の豊富な一般開業医、もしくは一般歯科にも詳しい矯正医で、全顎的な治療症例の多い歯科医院を探すことをお薦めします。
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3.検診・相談等で「難症例」「治療が困難」と言われた
この場合は専門医・認定医のいる矯正歯科でなければ難しいこともあります。
これらはあくまで一例です。ただし、1〜3全てにおいて治療が可能な一般開業医もあります。
それは矯正専門医・認定医が在籍する一般開業医と、フリーの矯正専門医・認定医が来ている一般開業医です。
実は、矯正の中でもフリーで様々な歯科医院の矯正治療を担当している歯科医師は少なくありません。つまりその場合、専門医・認定医の診断を一般開業院で受けられるということです。専門医・認定医の治療を受けたくても近くに開業している医院がないのであれば、合理的な考え方として、矯正専門・認定医と一般開業医のメリットを得られるこのような歯科に通うのが一つの手段であると考えます。
公開日:2017年12月6日
執筆者からのコメント
どこで治療を受ければ良いか、歯並びは一生を左右することですので、よく検討する必要があります。矯正医選びにおいて大切なのは知識・経験・咬み合わせです。知識だけでも歯は思い通り動きませんし、経験だけでは間違った治療を行う可能性もあります。そして何より咬み合わせを考えた治療を行っているか。これらをホームページや相談から判断する必要があります。
そして最後に、その歯科医師の人間性。矯正が始まれば2〜3年は毎月その歯科医師と顔を合わせることになります。この人なら信じられるというドクターを見つける。それがあなたの矯正を成功させる一番のポイントになるのではないでしょうか。