10本に1本発生!?インプラント周囲炎は予防が大切
インプラント治療後には何らかのトラブルが発生する可能性がありますが(被せものが割れる、歯茎が下がる、神経麻痺など )、その中でも近年特に注目されているのがインプラント周囲の骨が溶かされてしまう「インプラント周囲炎」という病気です。
インプラント周囲炎はインプラントの約10%(10本に1本)に見られたという報告があり、治療法もまだ確立していないことから、インプラント治療後はメインテナンスをしっかりと行う必要があります。
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インプラント周囲炎、インプラント周囲粘膜炎の発生率(罹患率)
インプラント周辺の骨が溶かされてしまう「インプラント周囲炎」は約10%(10本中1本)、インプラント周辺の粘膜に炎症が起きる「インプラント周囲粘膜炎」は約30%(10本中3本)に発生していると報告されています 1,2)。(日本国内と海外で、ほぼ同様の数字が報告)
- インプラント周囲炎(インプラント周辺の骨が溶かされる):約10%(10本中1本)
- インプラント周囲粘膜炎(インプラント周辺粘膜の炎症):約30%(10本中3本)
インプラント周囲粘膜炎になるとどうなるの?
インプラント周囲粘膜炎は自覚症状がほとんど無い場合が多いのですが、そのままにしていると気が付かないうちに進行してインプラント周囲炎になってしまう恐れがあります。インプラント周囲粘膜炎を早期に発見するためには、歯科医院での専門的な検査が必要です。
インプラント周囲炎になるとどうなるの?
インプラント周囲粘膜炎と呼ばれる歯肉の発赤や炎症から、インプラント周囲炎へと進行します。最悪の場合インプラントを支える骨の喪失によりインプラントの脱落が起こります。
インプラント周囲炎の治療法
インプラント周囲炎の治療法については世界中で多くの研究が行われていますが、現時点ではどういった方法が効果的なのか?ということがまだはっきりとは分かっていません 3)。
この、インプラント周囲病変はまだ限られたエビデンスしかない研究途中の病態であり、特に進行のすすんだ周囲炎については介入・寛解が容易ではありません。効果的治療法もいまだ確立されていないため、治療には困難を伴います。
当院では現在分かっているいくつかの治療法の中から、外科的療法を含む最善と思われる方法をご提案し、できる限りの治療を心がけています。また、より適切で効果のある治療をご提供できるように、今後もインプラント周囲病変についての知識・知見を常にアップデートしていきたいと考えています。
メインテナンスの重要性
インプラントをして、その上にかぶせ物などをされた方は、もう何もしなくても大丈夫と思われているかもしれません。
しかし、インプラント周囲粘膜炎およびインプラント周囲炎と表記される感染はこの数年広く、認知されております。インプラント周囲粘膜炎(インプラント周囲粘膜に限局した炎症病変)をそのままにしておくと、インプラント周囲炎(歯槽骨吸収にまで波及した病変)に進行していきます。
そうなると、残念ながら今のところ、確実な治療法は確立されておりません。その進行は天然の歯に比べてはやく、早期発見での介入治療が大事であるとの報告もあります。
そこで、定期的にメインテナンスを受けることにより、インプラント周囲の変化を見逃さず、万が一にも何かあれば早期発見、早期治療ということも重要になります。快適な口腔内環境を維持するためにも、メインテナンスを受診されることをおすすめします。
メインテナンスの目的
- インプラントとその周囲組織を口腔内で長期に安定して機能させる
- インプラント周囲粘膜炎および周囲炎の早期発見、早期治療
- インプラント以外の口腔内の疾患や症状の早期発見、早期治療
参考文献
- 1) The frequency of peri-implant diseases: a systematic review and meta-analysis.
- Atieh MA, Alsabeeha NH, Faggion CMJr, Duncan WJ,
J Periodontol 84, 1586−1598, 2013
- 2) Prevalence and risk factors for peri-implant diseases in Japanese adult dental patients.
- Yorimasa Ogata, Yohei Nakayama, Junichi Tatsumi, Takehiko Kubota, Shuichi Sato, Tetsuya Nishida, Yasuo Takeuchi, Tokuya Onitsuka, Ryuji Sakagami, Takenori Nozaki, Shinya Murakami, Naritoshi Matsubara, Maki Tanaka, Toshiaki Yoshino, Junya Ota, Taneaki Nakagawa, Yuichi Ishihara, Taichi Ito, Atsushi Saito, Keiko Yamaki, Etsuko Matsuzaki, Toshirou Hidaka, Daisuke Sasaki, Takashi Yaegashi, Tadashi Yasuda, Toshiaki Shibutani, Kazuyuki Noguchi, Hisao Araki, Noriharu Ikumi, Yukihiko Aoyama, Hideki Kogai, Kenji Nemoto, Shinji Deguchi, Takashi Takiguchi, Matsuo Yamamoto, Keita Inokuchi, Takatoshi Ito, Takashi Kado, Yasushi Furuichi, Mikimoto Kanazashi, Kazuhiro Gomi, Yukie Takagi, Keita Kubokawa, Nobuo Yoshinari, Yoshiaki Hasegawa, Tetsushi Hirose, Toshinaga Sase, Hirokazu Arita, Toshiro Kodama, Kitetsu Shin, Yuichi Izumi, Hiromasa Yoshie,
J Oral Sci 2016
- 3) Treatment of peri-implantitis: what interventions are effective? A Cochrane systematic review.
- Marco Esposito, Maria Gabriella Grusovin, Helen V. Worthington,
Eur J Oral Implantol 2012;5(Suppl):S21–S41
公開日:2018年4月26日
この記事の執筆者
白石 一則先生
歯科医師
医療法人社団 翔舞会 エムズ歯科クリニック副理事長
厚生労働省認定研修指導医
International Congress of Oral Implantologists 認定医