親知らずを抜いたほうがよい場合と、抜かなくてもよい場合とは?
多くの親知らずは、「横向きや斜め向きに生えている。一部が歯ぐきの中に埋まっている。」などの理由から汚れがたまりやすく、虫歯になったり腫れたりすることがあります。痛みや腫れがある場合には抜歯する必要がありますが、症状がなく歯科医師のチェックで今後も悪くなる可能性が低いと判断された場合には、かならずしも抜歯する必要はありません。気になる方は一度かかりつけの先生にご相談ください。
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親知らずってなんですか?
一番前の歯から数えて8本目の歯のことを「親知らず」と言います。
歯科医院では「第3大臼歯」や「智歯(ちし)」とも呼びます。
顎の一番奥の狭い場所に生えてくるため、きちんと生えることはまれで、横向きや斜め向きに生えてきたり、一部もしくは全部が歯ぐきの中に埋まったままであったりすることが多いです。1番奥にあるうえにきちんと生えてこない親知らずは、歯磨きが難しく汚れもたまりやすいので、虫歯になったり腫れを引き起こすことがあります。
埋まった親知らずの割合について日本での統計は見あたりませんが、イギリスの医学雑誌:BMJ clinical evidenceは20-30代の約72%に少なくとも1つの埋まった親知らずがあったと報告しています。
親知らずには上と下がある
一言で「親知らず」と言っても上と下では大違いです。
上の親知らずは、一般的に歯の根っこの形が単純で周りの骨も柔らかいため比較的簡単に抜歯することができます。
しかし、下の親知らずは、根っこの形が複雑で周りの骨も硬いため、一般の歯科医院では抜歯が難しく、大学病院や総合病院の口腔外科の受診を勧められることがあります。
このような違いはありますが、どちらも磨きにくい場所であることには変わりありません。
抜いた方がよい場合
1.炎症がある場合
いま腫れている。痛みがある。膿が出ている。繰り返し腫れる。などの場合は汚れが溜まって炎症が起きていますので抜歯するのが良いでしょう。取り除くことができない汚れは口臭の原因にもなります。
2.手前の歯が虫歯になっている場合
親知らずとその手前の歯との間に汚れがたまりそのままにしておくと、どちらの歯も虫歯になってしまいます。虫歯の原因は取り除けない汚れがたまってしまうことですので、親知らずは抜歯し手前の歯はきちんと治療しましょう。
3.このまま放置すると1や2になると予想される場合
今は何も症状がなくても、歯科医師がレントゲン画像をチェックすることで将来的に虫歯になったり腫れてしまう可能性が高いと予想することがあります。この場合も抜歯が最善です。放置すると噛み合わせが悪くなったり顎の関節付近に症状を出すこともありますので、適切な処置を受けましょう。
4.矯正治療を行う場合
矯正治療を行う場合にも予防的に親知らずを抜歯することが多いです。しかし、親知らずが手前の歯を押す力を利用して矯正治療をスムーズに進める場合もありますので、抜歯が必要かどうかは担当の先生の判断にお任せください。
抜かなくてもよい場合
でも安心してください。かならずしも「親知らず=抜歯」というわけではありません。
1.完全に埋まっている場合
歯ぐきや骨に完全に埋まっていて、今まで自覚症状がなく、レントゲンでも問題ないとされた場合は経過を観察することがあります。抜歯するメリットと、抜歯することによって起こるリスクを勘案して判断していくことが多いです。
2.綺麗に生えていてブラッシングもできている場合
親知らずの生え方に問題がなく、毎日のケアで綺麗に保つことができる場合は抜歯の必要はありません。
3.歯の治療に利用できる場合
手前の歯がなくなっていてブリッジの支えとして利用ができる場合には、抜歯をしないで残しておくことがあります。
参考文献
- Impacted wisdom teeth.
- Dodson TB1, Susarla SM.
BMJ Clin Evid. 2014 Aug 29;2014. pii: 1302.
- Prevalence of impacted teeth and associated pathologies--a radiographic study of the Hong Kong Chinese population.
- Chu FC, Li TK, Lui VK, Newsome PR, Chow RL, Cheung LK.
Hong Kong Med J. 2003 Jun;9(3):158-63.
公開日:2017年12月25日
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この記事の執筆者
佐々木 隆之先生
歯科医師
日本口腔外科学会 認定医
日本顎顔面インプラント学会
日本スポーツ歯科医学会
執筆者からのコメント
読者の皆様がご自身で「抜かなくてよい!」と判断され、逆に深刻な事態となることも考えられますので、一度主治医へご相談されることをお勧めします。