根管治療をしても痛みが取れません。もう抜歯しかないでしょうか?
治療をしたのに痛みが取れない、さぞかしお辛いことと思います。抜歯しかないのかどうか、検討の余地があるのかどうかお話させて頂きます。
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根管治療の適応になるような歯が抜歯と判断される場合は基本的に以下の通りです。
- 歯根が割れている(垂直性歯根破折を認める場合)
- むし歯が大きく無菌的環境を整えられない
- 治療を行っても噛むことに耐えられないであろうと判断された場合
逆に言えば、上記の原因でなければ治療の余地があると言えます。
まずは診察をして痛みの原因が特定できているのか振り返ってみることです。
通常、治療を行えば反応(痛みが取れる、腫れが引くなど症状の緩和)が起こるわけですが反応しないような場合、本当にその歯が痛みの原因なのか、そもそも歯の痛みなのかもう一度診察をして振り返って見ることは非常に重要です。
歯髄炎、根尖性歯周炎の診断は非常に難しいことがわかっています。根管治療に反応しないような場合、さらに診察を行い痛みの原因の特定を突き止めていく必要があります。
また、マイクロスコープをはじめとした拡大視野を用いることにより、見逃された痛みの原因(見逃された根管や歯髄組織、歯の亀裂や破折)などが見つかることもあります。
治療した歯に原因があると強く疑われた場合、治療環境を振り返ってみることです。
再び診断を行い根管治療を行った歯が痛みの原因であると強く疑われた場合、治療環境がどのようであったか振り返ってみてください。
歯髄炎、根尖性歯周炎の原因は「細菌感染」です。感染してしまった細菌をいかに減らすか、また減らした環境をいかに持続させるか、が治療を成功に導くカギとなります。
- むし歯の部分が完全に取り切れているのかどうか?
- ラバーダムをはじめとした無菌的環境で治療を行ったのかどうか?
- 見逃された未治療部分はないのかどうか?
- 適正な濃度の薬液で洗浄を行ったのかどうか?
- 根管充填の質は十分かどうか?
- 仮封は緊密に行われているかどうか?
診断、無菌的治療が妥当でないと判断されれば、無菌的環境を整えて再治療を検討すべきです。
原因が特定できていない、ラバーダムをはじめとした無菌的環境で治療を行っていないのであれば、その点を改善することで治療に反応するかもしれません。
無菌的環境の整え方(一例)
診断、無菌的治療が妥当であると判断されたにもかかわらず、治療に反応しないような場合は専門医への受診、という手もあります。
診断、無菌的治療が妥当であると判断されたにもかかわらず治療に反応しないということは、難治性の根尖性歯周炎が強く疑われます。専門医へ受診、と考えると敷居が高く思ってしまうかもしれませんが行うことはやはり診察を行い、原因の特定からとなります。
一般的に専門医が診査診断を行い下記の項目について判断します。
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1.根管治療の質を向上できるか?
(行った根管治療の精度を上げられるかどうか?) -
2.見逃された根管がありそうか?
(未治療の部分が残っているかどうか?) -
3.修復物の適合性に問題はないか?
(被せ物と歯との間にスキマが出来てはいないか?) -
4.根管系へのアクセスは可能か?
(根管の中に異物がある、石灰化しているかどうか?) -
5.除去は安全にできるか?
(大きい土台など外すことが可能かどうか?) -
6.自分のスキルと経験値の範囲内か?
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7.器具・環境は整っているか?
(マイクロスコープ、ラバーダムをはじめとする環境整備が行えるかどうか?)
これらのことが改善できるであろうと判断されたのであれば再治療(もう一度根管治療を行うこと)を検討しても良いかと思います。
これらのことが改善できないような場合は外科的歯内療法という外科的に根管内へ感染した細菌の除去と封鎖を行う処置が検討されることになるかもしれません。
公開日:2017年12月8日
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この記事の執筆者
高橋 宏征先生
歯科医師
日本歯内療法学会 会員
American Association of Endodontists 会員
この記事の監修者
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石井 宏先生
歯科医師 / ペンシルバニア大学 非常勤講師 / 神奈川歯科大学 非常勤講師
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執筆者からのコメント
いずれにせよ、明らかな抜歯の理由がない場合、抜歯をする前にできることはありますのでもう一度、主治医と相談なさってください。また、歯内療法専門医という根管治療を専門的に行う歯科医師もおりますので専門医に受診して見ることも問題解決の一助になるかもしれません。