信頼性を追求した
歯科メディア

虫歯治療において拡大鏡(ルーペ)やマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)は必要ですか?

ルーペとマイクロスコープの両方を治療の状況に合わせて使用している歯科医師の立場からルーペとマイクロスコープの違いの解説と虫歯治療におけるルーペとマイクロスコープの有用性を解説します。

詳しく見る

虫歯治療と拡大視野について

虫歯治療で修復治療が必要になる際、大切なポイントが二つあります。一つは、細菌に感染して回復(再石灰化)が見込めないエナメル質や象牙質など、いわゆる「感染歯質」(虫歯)を確実に除去する事。二つ目のポイントは除去後の形態を正確に回復すること、つまり歯の修復です。

虫歯治療の長期的に良好な結果(予後)の条件の一つに、適切な感染歯質の除去と除去部位に対しての緊密な封鎖が必要とされています。現在、これらのチェックは主に歯科医師の『目』によって行われているのが現状です。この歯科医師の『目』に大きな手助けをしてくれるのが拡大鏡(ルーペ)あるいはマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)です。拡大鏡(ルーペ)、あるいはマイクロスコープを使用することで、大きく拡大した視野の元、感染部位の判別、感染部位の除去、あるいは修復物の適合のチェックを行うことができます。

  • 弱拡大

  • 強拡大

ルーペとマイクロスコープの歴史

医療における拡大鏡(ルーペ)の歴史は1900年頃にさかのぼるのに対して、マイクロスコープの歴史は、1953年にドイツのカールツァイス社の開発から始まります。当初は耳鼻咽喉科用に開発されたものでしたが、その後、脳神経外科、眼科、形成外科、整形外科と使用される分野に広がりをみせした。

歯科においても拡大鏡(ルーペ)が先行して臨床に使用され、1990年代にマイクロスコープの歯科応用が始まりました 1)。歯科においては、マイクロスコープの使用は根管治療(歯の神経の治療)から始まり、その後、虫歯治療、歯周病治療などの分野での使用も広がりを見せつつあります。

拡大鏡(ルーペ)とマイクロスコープの違い

拡大鏡(ルーペ)は一般のメガネと同様に歯科医師の頭部に装着して使用しますので裸眼の時の診療姿勢とほぼ同じ姿勢で治療することが可能となります。

ルーペ

一方、マイクロスコープは診察台の近くに固定設置して使用します。見たい部位を見たい角度で見るためには、マイクロスコープ自体を動かす、あるいは、患者さんの頭の角度を変えるなどが必要となり、ある程度の慣れが必要となります。

マイクロスコープ

根管治療への応用

前述した様に、歯科におけるマイクロスコープの導入は根管治療から始まりました。根管内部(神経の管の内部)を治療台のライトや拡大鏡(ルーペ)に取り付けたライトだけで明るく照らすことは困難でマイクロスコープなしの治療はほぼ手探りの状態で進められます。マイクロスコープを使用することで、明るく拡大した状態で根管内を探索することが可能となりました。

また根管治療は治療中、1本の歯のみを集中的に診るため、マイクロスコープ自体をほとんど動かすことなく治療を進めることができ、もっともマイクロスコープが活躍しやすい分野です。

虫歯治療への応用

一方、虫歯治療に対してのマイクロスコープの使用はどうでしょうか?

拡大鏡(ルーペ)を使用して虫歯治療に臨む歯科医師は多くいますが、マイクロスコープを使用しての虫歯治療は広く一般化しているとは言えない状態です。

理由としては、根管治療と比較して、虫歯治療においては様々な角度で見る必要があり移動に一手間かかるマイクロスコープの使用には慣れが必要となります。拡大鏡(ルーペ)でも十分に明るい拡大視野を得られることもあり、マイクロスコープは虫歯治療においては不要と感じる歯科医師がいるかと思います。

拡大視野下での治療における科学的根拠(エビデンス)

マイクロスコープを使用した根管治療の中で、外科的にアプローチした治療は、マイクロスコープなしの治療と比較して治療成績が良いことを示す論文があり 2)、根管治療においてはマイクロスコープの有用性は高いとされています。(詳細は「ラバーダムやマイクロスコープは、根管治療の成功率に影響しますか?」参照)

それに対して、虫歯治療において拡大鏡(ルーペ)やマイクロスコープを使用する拡大視野下での治療の結果と裸眼での治療の結果とを比較した論文は存在するのでしょうか?論文検索をしたところ、残念ながら明確なエビデンスがある状況とは言えませんでした。

拡大視野下と裸眼での虫歯に対する診察と診断の正確さに差があるか?を調べた論文では、拡大視野下と裸眼での診察と診断の正確さには差が出ないということを示しています 3)。つまり、拡大鏡(ルーペ)やマイクロスコープの使用と裸眼とでは、虫歯の発見には大差がないということです。

そして、拡大視野下と裸眼の虫歯治療の結果の違いを示す高いエビデンスレベルの論文は存在しませんでした。つまり拡大視野下で虫歯治療すれば、良い結果が得られる可能性が高まるとは明確に示されていないのが現状です。

  • コンタクトカリエス
    弱拡大

  • コンタクトカリエス
    強拡大

  • コンタクトカリエス
    除去

虫歯治療における拡大視野は必要か?
- 著者の意見 -

拡大鏡(ルーペ)、マイクロスコープを使用していれば必ず正しい診察と診断そして適切な治療が行われ、良好な治療結果が出せるわけではなく、裸眼でも良好な治療結果を出せるというのが現状と言えます。

虫歯治療における拡大鏡(ルーペ)とマイクロスコープの評価としては、質の高い歯科治療をより容易にさせてくれる道具に過ぎないとみるのが、現状では公平な見方ではないかと思います。

著者自身はほぼ全ての治療工程において、拡大鏡(ルーペ)あるいは、マイクロスコープを使用していますが、使い続けるのにはいくつかの理由があります。

まずは歯科医師にとっての快適さです。一度、拡大鏡(ルーペ)、マイクロスコープでの治療になれてしまうと、質の高い治療を1日持続させるのに、裸眼では集中力を持続させるのが難しく感じてきます。裸眼での治療にはどこかミスを見逃したままで治療が完了してしまう可能性へのストレスがあると感じ、ルーぺ、マイクロスコープを使用することでそのミスの見逃しが軽減できるのでは、という安心感は何にも代えがたいものです。また歯の状態だけでなく歯肉縁下の細かい歯石、また虫歯の下に広がる細いヒビ割れの状態などが容易に確認できることなど利点が多くあります。

そしてとくにマイクロスコープへはカメラの装着が可能で、治療の様子を患者さんと共有できるというメリットもあります。これは患者さんにとっての安心感にもつながるのではないでしょうか。

  • CAD/CAMインレー形成後
    形成の状態を確認

  • CAD/CAMインレー試適
    修復物の適合を確認

  • CAD/CAMインレーセット後
    残存セメント、研磨状態を確認

参考文献

公開日:2018年2月6日

この記事の執筆者

依田 慶太

依田 慶太先生

歯科医師
博士(歯学)
東京医科歯科大学協力型施設研修指導医

杏雲ビル歯科

東京都千代田区神田駿河台2-2御茶ノ水杏雲ビル

TEL: 03-3292-3777

この記事の監修者

参加ドクター募集中!媒体資料請求はこちら

To PageTop