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舌に発生した口内炎と、舌癌の見分け方を教えてください

舌にできる口内炎には幾つかの種類があり、最も多く見られるのは「アフタ」と呼ばれる丸い潰瘍が生じるタイプです。一方、舌癌にも潰瘍ができるタイプがあります。比較的初期の舌癌ではアフタとよく似た潰瘍が生じる場合があるため、見分けるのが難しいのです。

アフタは日が経てば自然に治り、舌癌は治らないという点が大きな相違です。2週間が経過しても治癒しない口内炎は舌癌の疑いがあるため、医療機関を受診する必要があります。

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アフタ性口内炎とは?

「アフタ」とはギリシャ語で粘膜の表面に穴があいた状態、すなわち「潰瘍」という意味です。「アフタ性口内炎」とはアフタという潰瘍ができるタイプの口内炎を意味し、男性より女性の方がかかりやすく、発生原因はわかっていません。アフタは円形あるいは楕円形の潰瘍で、中心部は黄色や灰色、周囲は赤みを帯びています。また、アフタに触れたり、刺激物を飲食したりすると痛みます (1)。

アフタには直径1cm以上の大アフタとそれより小さい小アフタがありますが、8割以上は小アフタです。小アフタは4~14日で自然に消失し、跡形も残りません。大アフタは小アフタより痛みが強く、治癒までに2~6週を要し、跡形が残ります (2)。

舌癌の特徴

舌にできるがんの多数が扁平上皮癌であるため、このタイプの舌癌について解説します。

舌癌(扁平上皮癌)は舌の粘膜(扁平上皮)が悪性化したもので、他の口腔粘膜にできる癌よりも治療成績が悪いとされています。女性よりも男性に多く、喫煙や飲酒が関係しているとされています。60~80代が好発年齢です (3)。

舌癌は外に向かって膨れ上がりできもの(腫瘤)を作るタイプと、中に向かって増殖して中心部に潰瘍を作るタイプに分かれます。中にできた腫瘤を粘膜の上から触れると、「硬結」という硬いできものが確認できます。腫瘍の増殖スピードが速いため、中心部の血行が悪化して壊死すると潰瘍が発生しますが、アフタ性口内炎との識別が紛らわしい場合があり、注意が必要です。

アフタと舌癌の違い

アフタの特徴は円形か楕円形の潰瘍で、中心は黄色や灰色、周囲は赤みを帯びている点で、多数を占める小アフタであれば4~14日で自然消失します。このような所見ではなく、次のようなタイプの潰瘍の場合は舌癌の可能性があります (4)(5)。

  • 硬結を触れる
  • 痛み、周囲が赤くなるといった炎症所見が見られない
  • 潰瘍の縁が丸く、厚く、噴火口のようになっている
  • 潰瘍の形がきれいな円形や楕円形ではなく、いびつな形になっている
  • 潰瘍の中心部が平坦でなく、凸凹している
  • 2週間以上経っても潰瘍が治らない

一方、次のような潰瘍であればアフタの可能性が高くなります。

  • 同時期に多数の潰瘍ができる
  • 潰瘍が房のように集中している
  • 潰瘍の治癒後、再発を繰り返す

口の中に発生する癌の発見が遅れる理由の80%は、患者サイドにあるといわれています。30%の患者は病変に気付いてもすぐには医療機関を受診せず、3か月以上放置していたという報告もあります (6)。

誰もが自分に限って悪い病気に罹るはずがないという思い込みがあり、そのうち治るだろうと期待するようです。しかし、実際に舌癌が判明した場合にはそんな期待があだとなり、早期に治療を受ける機会を逃してしまうことにもなりかねません。普段と何か違うのではないか、どこか変だと感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。

執筆者からのコメント

舌にできる潰瘍として、アフタ性口内炎と舌癌について解説しました。この他にも多形性滲出性紅斑、結核性潰瘍、梅毒性潰瘍、入れ歯による褥瘡性潰瘍などさまざまな原因により潰瘍が生じます。

また、アフタにもベーチェット病やヘルペス感染など、特殊なタイプもあります。専門家でもすぐに診断できないものもあり、血液検査や病理組織検査が必要になるケースも珍しくありません。

近年、全国各地の自治体や歯科医師会、医療機関で「口腔がん検診」が実施されるようになってきています。一度受けてみられてはいかがでしょうか。

参考文献

公開日:2018年4月14日

この記事の執筆者

樋口 均也

樋口 均也先生

歯科医師
医療法人慶生会 ひぐち歯科クリニック 理事長
博士(歯学)
日本口臭学会 口臭専門医

医療法人慶生会 ひぐち歯科クリニック

大阪府茨木市別院町3-34サンワビル2F

TEL: 072-646-8445

この記事の監修者

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